外注費にかかる消費税を徹底解説|給与との違い・インボイスまで税理士が解説

外注先への支払いを「外注費」として処理している事業者の方も多いと思います。
しかし、その内容によっては「給与」とみなされ、消費税の仕入税額控除が否認されることがあります。
税務調査では、請負契約と雇用契約の区分が厳しく確認され、判断を誤ると追徴課税や源泉徴収漏れに発展するケースも少なくありません。
さらに、2023年10月から始まったインボイス制度によって、外注先が免税事業者の場合には、控除が制限される点にも注意が必要です。
本記事では、税理士の立場から以下のポイントをわかりやすく解説します。
- 外注費と給与の違い、税務上の判断基準
- 外注費にかかる消費税処理と仕入税額控除の考え方
- インボイス制度で注意すべきポイント
- 外注費に関する源泉徴収の対象と税率
- 税務調査でトラブルを避けるための実務対応
外注費と消費税の基本を整理

外注費とは?請負契約と雇用契約の違い
外注費(業務委託費)とは、事業者が業務を外部の専門家に委託し、その成果物の納品を受けた際に発生する費用を指します。
外注費の具体例- Webデザイナーにホームページ制作を依頼し、完成後に報酬を支払う
- ライターに記事執筆を依頼し、納品後に報酬を支払う
税法上、外注費として認められるには、支払先との契約関係が請負契約に基づくものかどうかによって判断されます。
- 請負契約:当事者の一方がある仕事の完成を約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を与えることを約束する契約(民法632条)
- 雇用契約:労働者は、労働時間や勤務内容など、発注者の指揮命令下で労働を提供し、それに対し使用者が対価を支払うことを約束した契約
外注費は課税仕入れに該当|仕入税額控除の考え方
消費税法上、事業者が国内で行う「資産の譲渡」や「役務の提供」は、原則として課税対象です。
したがって、外注先が請負契約に基づき業務を行う場合、その支払いは「課税仕入れ」に該当し、結果として納税額が軽減されます。
| 区分 | 金額(税込) | うち消費税額(10%) |
|---|---|---|
| 売上(課税売上) | 1,100,000円 | 100,000円 |
| 外注費(課税仕入) | ▲330,000円 | ▲30,000円 |
| 合計 | 770,000円 | 70,000円 |
納付すべき消費税
100,000円 − 30,000円 = 70,000円(納税額)
外注費が給与とみなされる場合の計算例
一方、外注費の実態が給与等と認められる場合は、課税仕入れには該当しないため、仕入税額控除を行うことはできません。
したがって、支払時に含まれる消費税を差し引くことはできず、納税額が増加します。
| 区分 | 金額(税込) | うち消費税額(10%) |
|---|---|---|
| 売上(課税売上) | 1,100,000円 | 100,000円 |
| 給与(不課税取引) | ▲330,000円 | 0円(控除不可) |
| 合計 | 770,000円 | 100,000円 |
納付すべき消費税
100,000円 − 0円 = 100,000円(納税額)
インボイス制度導入後の注意点(免税事業者との取引)
2023年10月以降のインボイス制度により、外注先がインボイス登録事業者でない場合、支払側は仕入税額控除を行えません。(経過措置あり)
そのため、外注費の取引においては、次の確認が必須です。
- 外注先が「インボイス登録事業者」であるかどうか
- 請求書に登録番号が記載されているか
- 外注費に含まれる消費税額等が明示されているか
特に外注先がフリーランスや個人事業主の場合は、契約時にインボイス登録の有無を確認しておきましょう。
外注費が「給与」とされるケース|判断基準とリスク
外注費と給与の違いは、単なる勘定科目の問題ではありません。
「消費税の仕入税額控除ができるかどうか」という大きな税務上の分かれ目になります。
ここでは、外注費が「給与」とされるケースと判断基準を整理します。
消費税法基本通達と判例からみる判断要素
外注費が「請負による報酬」として認められるか、「給与」と判断されるかは、契約の形式ではなく実態によって判断されます。
| 判断項目 | 請負(外注費) | 雇用(給与) |
|---|---|---|
| 代替性 | 他人が代わって作業できる | 代替不可 |
| 指揮監督 | 発注者の指揮を受けない | 指揮監督を受ける |
| 危険負担 | 成果物の完成で報酬発生 | 時間単位で報酬発生 |
| 材料・用具 | 自身で用意 | 発注者が用意 |
| 時間的拘束 | 自由に作業 | 作業時間を指定される |
これらのうち複数が「雇用(給与)」に該当すると、給与とみなされる可能性が高いと考えられます。
外注費が給与と認定された場合のリスク
もし外注費として処理していた支払いが、税務調査で「給与」と認定された場合、支払者は次のようなリスクを負います。
- 消費税の追徴:
課税仕入れが否認されるため、過去分の消費税を追加納付する必要があります。 - 源泉所得税の追徴:
給与と認定された場合、会社は源泉徴収義務者となり、未徴収の源泉所得税を事業主が納付する必要があります。 - 延滞税・加算税の納付:
消費税・源泉所得税の追徴のほか、延滞税や加算税(過少申告加算税・不納付加算税・重加算税)が課されることがあります。
外注費に関する源泉徴収のルール

源泉徴収が必要な外注費(原稿料・デザイン料など)
外注費のうち、個人事業主(フリーランス)への報酬を支払う場合には、一定の取引で源泉徴収が必要になることがあります。
法人への支払いには原則として源泉徴収義務はありませんが、支払先が個人の場合は注意が必要です。
| 対象報酬 | 税率 |
|---|---|
| 原稿料・講演料・デザイン料 | 10.21% |
| 一回の支払が100万円超の場合 | 超過部分に20.42% |
源泉徴収を怠った場合のリスク
源泉徴収をし忘れた場合、支払者側(会社や事業主)が以下の責任を負います。
- 未納源泉税の納付義務
徴収しなかった源泉所得税を、支払者が自ら納付しなければなりません。 - 加算税・延滞税の発生
原則として不納付加算税(10%)および延滞税が課されます。 - 取引先とのトラブルリスク
後から「源泉分を返してください」と請求するのはトラブルの元です。
契約時に「報酬は源泉控除後の金額を支払う」と明記しておくと安心です。
まとめ|外注費の消費税処理を安全に行うために

外注費は、請負契約に基づく役務の提供であれば「課税仕入れ」に該当し、消費税の仕入税額控除を行うことができます。
一方で、業務の実態が雇用に近い場合には「給与」と判断され、控除の対象外となる点に注意が必要です。
さらに、インボイス制度によって、外注先がインボイス登録事業者でない場合、仕入税額控除に制限がかかる点にも注意が必要です。
契約内容・請求書・取引相手の登録状況を、日常的にチェックしておくことが安全な処理の第一歩です。
まとめ- 外注費は「請負契約」であれば課税仕入れ、仕入税額控除が可能
- 雇用実態があると「給与」とみなされ、控除否認・追徴リスクが発生
- インボイス制度により、外注先の登録状況確認が必須
- 源泉徴収や契約書整備を怠らないことが、税務トラブル防止の鍵
不安な場合は、専門家に契約書や処理方法を一度チェックしてもらうことをおすすめします。

石田 航平(税理士/経営心理士)
石田航平税理士事務所/イナステラ総合会計事務所 代表
元国税専門官。Big4税理士法人を経て、現在は、売上改善・創業支援に強みを持つ税務会計の専門家として、数多くのフリーランス・企業の経営支援に従事している。
.png)

