札幌市の税理士「イナステラ総合会計事務所」

札幌市の税理士「イナステラ総合会計事務所」
【対応地域】北海道(全国オンライン対応可能)
【最寄駅】JR函館本線「桑園駅」徒歩6分

050-5799-9445

電話受付時間 : 平日9:00~16:00 休業日:土日祝

メール対応は24時間受け付けております。

お問い合わせはこちら

設立初年度の役員報酬はいくらにすべき?シミュレーションでわかる正しい設定方法

このサイトはアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト含む)を掲載しています。

 

会社を設立したばかりの経営者にとって、最初の大きな悩みが「役員報酬をいくらに設定するか」ではないでしょうか。

 

役員報酬(定期同額給与)は、「3か月ルール」と呼ばれる税法上の制約があり、一度決めると原則として事業年度の途中で変更できません。

 

高く設定しすぎると資金繰りが苦しくなり、支給しないと社会保険や信用面で不利になるため、多くの社長が頭を悩ませています。

 

この記事を読めば、最適な役員報酬額を決めるための考え方と手順が明確になります。

 

この記事でわかること
  • 設立初年度に押さえておくべき「役員報酬の基本ルール」
  • 利益・税金・社会保険のバランスを踏まえた役員報酬の決め方
  • 実際の支給額・手取りシミュレーション

 

役員報酬とは?基本の仕組みを理解しよう

役員報酬とは、会社が取締役・代表取締役などの役員に対して支払う給与のことです。

 

社員に支払う「給与」と似ていますが、税務上の扱いが異なるため、まずは基本を押さえておきましょう。

役員報酬は原則損金不算入。ただし条件を満たせば経費にできる

税法上、役員報酬は原則として損金(経費)に算入できません。

 

しかし、一定の条件を満たすことで、損金=法人税の計算上、経費として認められるようになります。

 

もし経営者が自由に報酬額を増減できると、利益の操作(節税目的の調整)が可能になってしまいます。

 

それを防ぐために、法人税法では「損金にできる役員報酬」の要件を厳格に定めています。

損金算入が認められる3つの役員報酬

税法上、損金に算入できる役員報酬は、以下の3種類に分類されます。

 

設立初年度の中小企業では、ほとんどのケースが「定期同額給与」に該当します。

種類 概要 届出の要否 主な対象
定期同額給与 毎月同じ金額を定期的に支給する報酬。最も一般的な形態 不要 中小企業
事前確定届出給与 あらかじめ支給日と金額を届け出て支払う報酬(役員賞与) 必要(税務署に届出) 中小〜上場企業
業績連動給与 業績や利益に応じて支払う報酬 有価証券報告書への記載 上場企業など

定期同額給与の原則「3か月ルール」とは?

「定期同額給与」については、事業年度の開始日(または設立日)から3か月以内に支給額を決定しなければなりません。

 

もし、3か月を過ぎてから役員報酬を決定した場合は、損金にできないため注意が必要です。

 

なお、職務内容の大幅変更など、やむを得ない場合を除き、金額の変更はできないためご注意ください。

設立初年度の役員報酬|おすすめの決め方

設立初年度の役員報酬は、「3か月ルール」によって早期に決定する必要があります。

 

しかし、設立初年度は、売上や利益の見通しが立ちにくく、役員報酬をいくらに設定すべきか判断に迷う社長がほとんどです。

 

ここでは、3つのステップで無理のない報酬額を決める方法を解説します。

ステップ①:会社の利益をシミュレーションする

役員報酬を決めるうえで最も重要なポイントの一つが、会社の利益を予測することです。

 

これは、毎月の報酬額を固定で支払うため、一度決めた金額が資金繰りに直接影響するからです。

 

まずは1年間の売上・仕入・経費などを見積もり、「資金繰りを悪化させない金額」を慎重に設定する必要があります。

ポイント
設立初年度は売上が安定しないため、“少し控えめ”な予測が鉄則。
悲観・標準・好調の利益予想を立て、キャッシュが尽きない金額に設定しましょう。

ステップ②:社会保険料を含めたキャッシュアウトを把握する

役員報酬を支払うと、会社には、社会保険料の会社負担分(約15%)が発生します。

 

つまり、会社が実際に支出する金額は「役員報酬+社会保険料」です。

 

月額報酬ごとの負担・手取りシミュレーション

月額報酬 手取り 会社負担(社保) キャッシュアウト
8万円 約6.8万円 約1.2万円 約9.2万円
20万円 約16.8万円 約2.9万円 約22.9万円
30万円 約25.0万円 約4.4万円 約34.4万円
40万円 約32.9万円 約6.0万円 約46.0万円
50万円 約40.9万円 約7.3万円 約57.3万円
80万円 約63.4万円 約10.3万円 約90.3万円
100万円 約78.2万円 約11.3万円 約111.3万円

年間報酬ごとの負担・手取りシミュレーション

年間報酬 手取り 会社負担(社保) キャッシュアウト
96万円 約81.5万円 約14.4万円 約110.4万円
240万円 約201.1万円 約34.3万円 約274.3万円
360万円 約300.2万円 約51.4万円 約411.4万円
480万円 約395.4万円 約70.3万円 約550.3万円
600万円 約491.4万円 約85.8万円 約685.8万円
960万円 約761.4万円 約120.2万円 約1,080万円
1,200万円 約939.1万円 約131.9万円 約1,331万円

※ 単身・40歳未満・北海道の令和7年度保険料に基づく概算です。
実際の保険料率は都道府県ごとに異なるため、「都道府県毎の保険料額表」をご確認ください。

ステップ③:シミュレーションから見える現実的な支給ライン

ここまでのシミュレーションをもとに、「会社が黒字で着地するライン」を意識して報酬額を決めましょう。

 

税金面では、法人の実効税率は課税所得400万円以下で約21%程度のため、無理に利益ゼロを狙う税負担ではありません。

 

利益予想に基づく役員報酬の目安

年間の利益予想 目安となる役員報酬額 月額換算
~200万円 ~96万円 8万円
~400万円 ~240万円 20万円
~800万円 ~600万円 50万円
~1,500万円 ~1,200万円 100万円
ポイント
「利益ゼロを目指す」よりも、「少し黒字で着地させる」方が安全。
信用面や融資審査にも好影響です。

役員報酬に関するよくあるご質問

よくある相談

設立初年度に役員報酬を「なし(0円)」にすることは可能ですか?

法的には可能ですが、あまりおすすめできません。

 

社会保険・税金・信用面で、デメリットが生じる場合があるため注意が必要です。

 

こちらの記事で詳しく解説しています。

資金繰りの都合で役員報酬を後払いにすることはできますか?

一時的な未払いであれば、一定の条件のもと認められます。

 

資金繰りの都合で一時的に役員報酬を支払えなかった場合でも、未払いとなったことに相当の理由があり、かつ、短期間のうちに支払う見込みがあり、帳簿に明確に記録されているときは、税務上「定期同額給与」として認められると考えられます。

 

実務上は、1期目の決算を迎える前に役員報酬の未払いは解消しておくのが、望ましいでしょう。

まとめ|役員報酬は税金・社会保険料・資金繰りのバランスで決めよう

article会社設立初年度の役員報酬の決定は、「3ヶ月ルール」に縛られるため、一度決定すると原則として事業年度内は変更できません。

 

そのため、感覚や周囲の相場で決めるのではなく、「会社の利益予想」や「資金繰り」のバランスを踏まえた慎重な設定が不可欠です

まとめ
  • 設立から3か月以内に金額を決定(定期同額給与の要件)
  • 社会保険料(会社負担分約15%)を含めて資金繰りを確認
  • 利益ゼロを無理に狙わず、わずかな黒字で着地するのが理想
  • 役員報酬ゼロや後払いは一時的な措置として慎重に運用

 

シミュレーションで結果が大きく変わるため、迷ったときは早めに税理士へ相談し、「税務的にもキャッシュ的にも無理のない金額」を一緒に検討することをおすすめします。

 

石田 航平(税理士/経営心理士)

石田航平税理士事務所/イナステラ総合会計事務所 代表
元国税専門官。Big4税理士法人を経て、現在は、売上改善・創業支援に強みを持つ税務会計の専門家として、数多くのフリーランス・企業の経営支援に従事している。

 

Return Top