源泉徴収票がもらえない?必要になるケースと正しい対処法を徹底解説
「源泉徴収票をもらえない」と困っている方は少なくありません。
転職や確定申告、住宅ローン審査など、源泉徴収票はさまざまな場面で必要になります。
法律上、会社には発行義務がありますが、実際には、
- 「退職した会社から届かない」
- 「依頼しても発行してくれない」
といったトラブルが起こることもあります。
この記事では、源泉徴収票の基本から、発行されないときの対処法まで、税理士の視点でわかりやすく解説します。
- 源泉徴収票とは何か、その役割と重要性
- 源泉徴収票を会社が発行する義務と時期
- 源泉徴収票が必要になる代表的なシーン
- もらえない場合の具体的な対応方法
- 人事担当者としての適切な対応策
- 源泉徴収票に関するよくあるご質問
源泉徴収票とは?内容をわかりやすく解説
源泉徴収票に記載される主な内容
源泉徴収票とは、会社が従業員に対して支払った給与や天引きされた所得税・社会保険料などが記載された書類です。
出典:国税庁「令和 年分 給与所得の源泉徴収票」
源泉徴収票の主な記載事項
項目 | 内容 |
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支払金額
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1年間に支払われた給与・賞与の総額
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所得控除の額の合計額
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各種所得控除の金額を合計した金額
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源泉徴収税額
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会社が給与から天引きして納付した所得税額
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社会保険料等の金額
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健康保険料や厚生年金保険料など
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源泉徴収票の発行義務と発行時期
源泉徴収票の発行義務
雇用主(給与を支払う者)は、源泉徴収票を発行義務する義務があります。
源泉徴収票をもらえる人
源泉徴収票の交付対象となるのは、給与を受け取ったすべての人です。
- 給与を受け取った正社員・パート
- 年の途中で退職した従業員
注意!
フリーランスとして業務委託契約を結んで報酬を受け取った場合、源泉徴収票は発行されず、「支払調書」が発行されるのが一般的です。
在職者・退職者それぞれの源泉徴収票の発行期限
会社は、その年の翌年1月31日までに従業員へ源泉徴収票を交付します。
退職した場合は、退職後1か月以内に源泉徴収票を交付することが原則とされています。
項目 | 内容 |
---|---|
在職者 |
翌年1月31日まで
|
退職者 |
退職後1か月以内
|
源泉徴収票が必要になる主なケース
源泉徴収票は、日常生活のさまざまな場面で必要となります。
ここでは代表的なケースを整理して解説します。
確定申告に必要な場合
自分で確定申告を行う場合は、源泉徴収票が必要となります。
確定申告が必要なケース- 年の途中まで会社員で、個人事業主として独立
- 年の途中で退職し、再就職が年明け
(年内の再就職は、再就職先で年末調整) - 副業の所得が年間20万円を超えるとき
転職・再就職した場合
転職をした場合、新しい勤務先で年末調整を行うために前職の源泉徴収票の提出を求められます。
源泉徴収票がないと、正しい税額計算ができず、余分に税金を払うことになったり、還付が受けられなかったりするリスクがあります。
住宅ローンなどの各種審査で、収入証明が必要な場合
源泉徴収票は「収入を証明する書類」として、金融機関などから提出を求められることがあります。
源泉徴収票はどこで発行してもらえるのか
源泉徴収票は、勤務先の会社が作成するため、税務署や市役所で直接発行してもらうことはできません。
ここでは在職中と退職後のケースに分けて、入手方法を解説します。
現職の場合の依頼先
在職中の従業員が源泉徴収票を必要とする場合は、会社の経理部門や人事部門に依頼します。
紛失してしまった場合も、会社に依頼すれば再交付してもらえます。
退職済みの場合の依頼先
退職した場合は、退職した会社に直接依頼する必要があります。
源泉徴収票は退職後1か月以内に交付されるのが原則ですが、届かない場合は、会社の人事担当へ連絡しましょう。
会社側の事務処理に時間がかかることもあるため、早めに依頼するのが安心です。
源泉徴収票が届かない・発行してもらえない場合の対応策
本来、会社には源泉徴収票を交付する義務があります。
しかし、実際には「依頼しても無視される」といったトラブルも少なくありません。
ここでは、発行してもらえない場合の具体的な対応策を解説します。
まずは会社への連絡と催促
最初に行うべきは、退職した会社への連絡と確認です。
経理や人事担当に直接連絡し、状況を確認しましょう。
会社によっては、源泉徴収票発行のために、申請書類を提出する必要があるため、時間に余裕をもって対応しましょう。
税務署への相談と「源泉徴収票不交付の届出書」
会社に連絡しても源泉徴収票を発行してもらえない場合は、所轄の税務署に相談してください。
税務署では源泉徴収票そのものを発行することはできませんが、「源泉徴収票不交付の届出書」を提出することで、税務署が会社に行政指導をしてくれます。
届出にあたっては、「勤務先とのやり取りの内容」などが必要となるため、ご注意ください。
出典:国税庁 「源泉徴収票不交付の届出書についての留意事項」
雇用形態が理由で発行を拒否された場合
「アルバイトだから発行できない」、「短期雇用だから不要」などと会社に言われることがありますが、これは誤りです。
雇用形態(業務委託を除く。)にかかわらず、給与を支払った以上、会社には交付義務があります。
転職者に「源泉徴収票が発行できません。」と言われた人事担当者の対応
転職してきた従業員から「前の会社から源泉徴収票をもらえませんでした」と相談を受けることがあります。
ここでは人事担当者として適切な対応方法を整理します。
まずは前職への連絡を促す
源泉徴収票は、必ず前職の会社が交付するものです。
そのため、従業員本人に対し、まずは改めて前職の会社へ依頼するよう伝えましょう。
- 退職後1か月以内に交付義務があることを説明
- 総務・経理部門への正式な依頼を促す。
税務署への相談を勧める
それでも入手できない場合には、所轄税務署への相談を案内します。
税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出すれば、税務署が前職の会社へ指導を行ってくれます。
年末調整の進め方
もし年末調整までに源泉徴収票が手に入らなければ、入社してからの給与のみで年末調整を行い、源泉徴収票を発行します。
その上で、従業員には、前職分の源泉徴収票を入手次第、自分で確定申告を行うよう促します。
年末調整は会社の義務である(所190①)ため、年末調整を行わないという選択肢は取らないよう注意しましょう。
源泉徴収票に関するよくあるご質問
業務委託契約の場合も源泉徴収票は発行されますか?
業務委託契約の場合は、源泉徴収票は発行されません。
源泉徴収票は、あくまでも雇用関係に基づいて「給与所得」がある人に対して発行される書類となります。
源泉徴収票の再発行にはどのくらい時間がかかりますか?
会社によりますが、源泉徴収票の再発行は、おおむね1か月程度を見込んでおきましょう。
日雇いの場合でも源泉徴収票を発行してもらえますか?
日雇いの場合でも、会社側に源泉徴収票の発行が義務付けられています。(所法 226 ①)
まとめ|源泉徴収票をもらえないときは会社か税務署へ相談を
源泉徴収票は、税務手続きだけでなく、転職・住宅ローン申請など生活のさまざまな場面で必要となる非常に重要な書類です。
まとめ
- 会社には、在職者・退職者を問わず源泉徴収票を交付する義務がある。
- 発行時期は、在職者は翌年1月31日まで、退職者は退職後1か月以内が原則
- もらえない場合、まず会社に連絡し、もらえなければ税務署に相談
源泉徴収票は「もらえないから諦める」ものではなく、法律に基づいて必ず発行されるべき書類です。
困ったときには、一人で抱え込まず、税務署や税理士に相談することをおすすめします。

石田 航平(税理士/経営心理士)
石田航平税理士事務所/イナステラ総合会計事務所 代表
元国税専門官。Big4税理士法人を経て、現在は、売上改善・創業支援に強みを持つ税務会計の専門家として、数多くのフリーランス・企業の経営支援に従事している。